サウナの本場フィンランドでは「ロウリュ」が一般的です。
サウナの中にあるストーブの上に置かれた石に水をかけることで蒸気が発生する、これがロウリュです。
しかし、日本においては意外とサウナ好きな方しかロウリュを知らない人もいるようです。
ロウリュとは何か、日本におけるロウリュの歴史、そして日本でまだまだ少ないのはなぜかも気になるところ。
今回はフィンランド式サウナの定番である「ロウリュ」にスポットを当て、その目的、歴史について解説します。
そもそもロウリュはフィンランド語であり、その意味は「蒸気」。
石に水をかけることで蒸気が充満し、それによって発汗を促していくことができます。
元々フィンランドで行われていたサウナは、小屋の中で薪を燃やす形から始まっています。
中は煙だらけ、煙で顔が汚れる人も出てくる中で、換気をしながらも中の温度などを確保するためにロウリュに切り替わっていったと言われています。
フィンランドは自宅にサウナがあるなど、日本とは比べ物にならないほどサウナがあります。
これは自宅にお風呂があるようなもので、フィンランドではその感覚です。
ゆえに知り合いなどに自宅のサウナに招待されることはとても有意義なことです。
ロウリュとセットになっているものに「ヴィヒタ」があります。
ヴィヒタは白樺の木の枝をまとめたもので、場所によっては別の木の枝を使うことも。
これを使ってスタッフに身体を叩いてもらいます。
そうすることでより汗をかきやすくなるのです。
白樺などがない場合は「フェイクヴィヒタ」を用いて、アロマ水につけてバシバシと叩くことで、ヴィヒタで叩いてもらうのと同じ効果が得られます。
日本でロウリュとヴィヒタがセットになっているところはまだ少ないですが、フィンランドでは一般的です。
世界でサウナが浸透したのは、ベルリンオリンピックの時にフィンランドの選手たちがサウナを持ち込んだからとされています。
実はサウナの歴史はオリンピックと関係が根強いのです。
日本におけるサウナの歴史は、1957年に銀座にあった温浴施設にサウナが登場してから。
しかし、この時は技術的に難しく、配管が床にも通っていたことで床がアツアツな状況。
当然この時点でロウリュは存在していません。
ちなみにこの段階でサウナが登場したのも日本のオリンピック選手がサウナを体験したからでした。
東京オリンピックでフィンランドの人たちが日本を訪れ、サウナを持ち込んだことでサウナブームが到来。
1980年代になると札幌で「札幌テルメ」が開業し、今でいうスーパー銭湯が誕生、その中にロウリュができるサウナもあり、その歴史は40年近く。
しかし、運営会社の急激な拡大路線が災いし、しばらくして倒産。
ロウリュが一般的になるのは大阪にあるニュージャパンサウナまで待たないといけません。
ニュージャパンサウナは画期的なサービスを展開し、今では当たり前となったカプセルホテルもニュージャパンサウナから始まっています。
ニュージャパンサウナでロウリュを導入したのは1995年の事。
カプセルホテルが全国に広がったように、ロウリュもまた同じように広がっていきましたが、歴史が短い要因はなんといっても設備と管理の問題。
例えば、セルフロウリュは自分で水をかけることになりますが、この掛け方を間違うと水蒸気がたくさん出て、一緒に入っている人に不快な思いをさせることも。
そもそも水蒸気を浴びたいと思っていない人もいるので、なかなか難しいところ。
セルフロウリュの際には周囲に声をかけることがマナーになっており、その量にも決まり事があるなど、お客さんに全てを委ねるのは大変。
かといって、スタッフが常駐する形になると人件費がかかります。
また現在でも悪質な問題が起きており、岐阜県にあるサウナで石に自分の尿をかける事件が起き、全国のサウナーを激怒させました。
段々と増えているものの、どこでも当たり前のようにフィンランド式サウナにならないのは、ロウリュのマナーを知らない人がまだまだ多いことの現れかもしれません。
セルフロウリュでなくてもスタッフが常駐するロウリュであれば十分にロウリュの素晴らしさを体感することができます。
セルフでない形であれば多くの温浴施設がロウリュを取り入れています。
ちなみにスタッフがロウリュを行い、お客さんに蒸気を浴びせるのは「アウフグース」と呼ばれ、ドイツにおけるサウナのスタイルです。
日本ではセルフロウリュよりもアウフグースの形が一般に浸透しており、熱波師と呼ばれる人たちがタオルや大きなうちわで熱波を送るのはその1つと言えます。
一方で機械を活用した「オートロウリュ」も存在します。
例えば「スパメッツァ おおたか竜泉寺の湯」では、10分に1回オートロウリュが稼働するほか、1時間に1回、一斉にオートロウリュが稼働し、大量の熱波が襲い掛かります。
別名「ドラゴンロウリュ」と呼ばれ、大量の熱風がこれでもかと充満するため、身体に一気に熱が帯びてきます。
水風呂もユニークで、深水風呂は男湯で実に157センチの深さを誇るほか、広々とした水風呂、水温が10℃未満の冷水風呂などバラエティに富んでおり、外気浴スペースは男湯だけでベッド、椅子合わせて33のスペース。
さすがは人気のスーパー銭湯です。
セルフロウリュにこだわるのもいいですが、オートロウリュでマナーなど気にせず楽しむというのも1つの楽しみ方です。
ロウリュの歴史を考えると日本はまだまだ発展途上です。
ロウリュのマナーが浸透するにはロウリュとは何かを知ること、そして体験することが1つのポイントになります。
まだ普及し始めて30年にも満たない中で、セルフロウリュのマナーを多くの人に期待するのは無理があるかもしれません。
まずは自分でマナーを学び、そのマナーを実行していくことが大切です。
1人1人がそのマナーを理解するようになれば、セルフロウリュを行うお店も増えるはず。
その時が来れば、日本は真のサウナ大国になることでしょう。