年々健康志向が高まっており、健康を趣味にする方が多く見られるようになりました。
その中でここ数年サウナがブームとなっており、様々な媒体でサウナが取り上げられるようになりました。
しかし、日本ではこれまでにもサウナがブームになった時代が何回か訪れています。
これまでのサウナブームと今のサウナブームではどのような違いがあるのか、その歴史を少しだけ辿ってみましょう。
日本におけるサウナの歴史は1957年で、東京・銀座にオープンした施設でサウナが設置されたのが最初でした。
その後、サウナは知る人ぞ知る存在となっていましたが、本格的にサウナが知られるようになったのは1964年。
この時期、サウナの本場フィンランドの選手団が東京オリンピックで来日し、サウナを持ち込んだことでその人気に火が付きます。
この第一次サウナブームでの大きなポイントは、男性が利用する施設ばかりにサウナが設置されていったところにあります。
終電がなくなるまで飲み明かし、サウナで汗を流し、仮眠をとって再び出勤するという、パワフルなサラリーマンが多く、結果的に都市部を中心にサウナが広がっていきます。
従来はサウナを専門的に扱う温浴施設では男性のみが利用できる場所が多く、サウナとして優れているのに女性が利用できずに悔しい思いをするケースが少なくありません。
こうした背景には第一次サウナブームで男性が利用する施設を中心にサウナが増えていったことが背景にあります。
このブームは下火になったというよりも、男性の憩いの場としてのサウナが定着したという意味では大きな出来事だったかもしれませんが、今日のサウナブームにおいて足かせになってしまっている部分も大きく、男性専用だった施設から如何に切り替えていくのか、そのあたりが今後注目のポイントです。
いわゆる男性の憩いの場として作られてきたサウナがようやくひと段落してきたのが1990年代。
その時代に人気を得たのが神奈川県にある「相模健康センター」でした。
相模健康センターはお風呂の種類が豊富であることやサウナが充実していること、そしてゲームコーナーなど家族で楽しめる場所も用意されており、いわゆる「スーパー銭湯」の先駆けとなりました。
男性の憩いの場だったサウナが家族の憩いの場になったのが第二次サウナブームの大きな特徴です。
このサウナブームで全国にスーパー銭湯がオープンするようになります。
ファミリーで楽しめるサウナ、温浴施設がどんどんオープンしていき、少々高いお金を出してもお風呂に入るのを楽しむというのが一種のブームとなります。
90年代後半、大阪にオープンした「スパワールド」もまさにスーパー銭湯をより大きくしたような施設です。
11月11日のポッキー&プリッツの日に合わせてイチゴのポッキーを模した温泉を用意するなど、温泉やサウナをより楽しむことに特化した場所となっています。
第一次サウナブームでは男性の憩いの場、そして、終電を逃したサラリーマンが仮眠をする場、もしくは帰宅前に一杯飲んでサウナに入ってから帰宅する場など、主人公はサラリーマンでしたが、第二次サウナブームでは主人公はサラリーマンだけではなく、女性や子どもまで含まれるようになりました。
その一方でスーパー銭湯同士の競争は激化し、その競争に敗れた温浴施設が撤退を余儀なくされるケースも増えてきました。
前述のサウナブームをけん引した「相模健康センター」も2021年に営業を終了し、街の銭湯が衰退し、スーパー銭湯に対抗するため、生き残りをかけた勝負に出るケースも増えてきたタイミングにもなっています。
現状は第三次サウナブームにあるとされており、都市部にも新たにサウナの店舗がオープンし始めています。
マンガサ道、そのドラマ化などで今までサウナと距離があったり、スーパー銭湯でただ単に楽しんだりしていた人たちが、真剣にサウナと向き合い、サウナの素晴らしさに目覚めていったことがブームにつながっている状況です。
今までと大きな違いは、若い女性がサウナを評価するようになったこと。
今までのサウナはサラリーマンが行くところであり、ただただ暑い環境の中に身を置かなければならないと考えられてきました。
しかし、水風呂に入ってから外気浴を行っていくことで“ととのう”快感が得られるようになり、自ら体験してその素晴らしさに気付いた人たちが増えたこともポイントになっています。
サウナを1つのツールとして扱い、健康志向の趣味を作りたい意味合いでサウナーになっていった若い人たちが増えたこともサウナブームにつながっているとされます。
そのため、現在増えている温浴施設には個室サウナが多く、誰からも邪魔されることなく、楽しみながらサウナに興じることができる場所が多くなっています。
一方、第二次サウナブームでおなじみのスーパー銭湯にも動きがあり、郊外を中心に大きな施設を建て、オートロウリュなど複数のサウナや複数の水風呂を設置して、よりこだわりをもって“ととのう”ことができる施設を作るなど、様々なニーズに合わせた動きがみられています。
サウナブームによって日本のサウナ文化はより深く、より細かく、そして成熟している状況です。
その一方でマナーの問題などまだまだ克服すべき課題が多く、サウナが身近にあるというより、1つのレジャーもしくはツールという距離感にあり、サウナの本場フィンランドのように身近にサウナがあるという感じにはまだ至っていません。
身近にある銭湯などのようなサウナブームはいつ訪れるのか、このブームが訪れた時に日本のサウナ文化はもっと進化することでしょう。
少なくともおじさんたちだけの遊び場だったサウナはもう古く、老若男女問わず、誰でも楽しめて、健康的に過ごせる場所になっていることは確かです。